遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった人)の名義だった財産、つまり相続財産をどのように分け合うのかを法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)全員で話し合い合意することです。
遺産分割協議に基づいて実際に不動産の名義書き換えや預貯金の分割などを行うことができるためには法的な要件があります。
では、実際どのように進めていけばよいのか、そしていくつかの注意点を確認してみましょう。
遺産分割協議に参加する権利、義務があるのは「法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)全員」です。
戸籍により特定される法定相続人全員が漏れなく合意しなければなりません。
ただ、一つの場所に集合することや実際に会うことが要件になっているわけではないので、電話や手紙等の方法で順次合意を取り付けていくなどでもOKです。
要するに最終的に全員が「分割内容に合意」していればよいということです。
遺産分割協議を行う際の手順を見てみましょう。
遺産分割協議に限らず、すべての相続手続きでこれがスタートラインです。
自分が相続人だと思い込んでいたが違っていた、また、相続の事実も知らなかったような遠い関係の人が相続人になるケースもありますので、先入観で判断しないことが大切です。
とりわけ、相続人の1人が亡くなっているなどのケースでは死亡の前後で法定相続人が変わってくることがよくあります(数次相続、代襲相続)。
また、再婚や養子など、身分関係が単純ではない場合も相続人の判断ミスをしやすくなりますので、このような状況の人は先に弁護士や司法書士などの専門家に相続人の特定作業をしてもらう方がよいでしょう。
遺産(相続財産)をリスト化しておくと話し合いの際に全員にわかりやすくスムーズになります。
遺産の範囲に含まれる対象物や価格の調査方法は、一般的には次の通りです。
・不動産
・現金
・預貯金
・有価証券(株や投資信託など)
・自動車
・動産(絵画、骨董品等)
とりわけ不動産については評価方法が難しい部分があります。
不動産の価格は「一物四価」などと呼ばれることもありますが、「固定資産税評価額」「路線価」「公示価格」「時価(実勢価格)」などさまざまな基準があります。
相続税の算定にあたっては専門的な計算方法が決まっていますが、遺産分割協議ではどれを使わなければならない、とは決められていないので、法定相続人全員が納得、合意していればいずれを使うのかは自由ということになります。
相続人と相続財産が特定されたら、全員と何らかの形で連絡を取り、遺産分割の方法を話し合うことになります。
この段階がスムーズにいくかどうかは各家庭によって全く異なります。
いくら協議を試みても合意しない相続人がいる、ということも珍しくありません。
どうしても合意に至ることができない場合は調停、裁判など次の段階を踏まなくてはならないことになります。
もし、相続人の中に連絡先がわからない、連絡先は知っていても電話に出ない、郵便物が届かないなどの状況になったらどうすればよいのでしょうか?
住民票上の住所は相続人の1人から「戸籍の附票」を請求することにより知ることができるのですが、
郵便物が到達しているが返事がない、連絡を要請しても連絡してこない
郵便物自体が戻ってきてしまう
といったことが考えられます。
そのような場合、状況によっては「内容証明により返信を促す」「住民票がある場所のはずなのに郵便物が届かないなど、そこに住んでいる様子がない場合は不在者の財産管理人選任を裁判所に申立てる」といった対応が考えられます。
そうなると本人自身が行うことは難しく、調停や裁判まで持ち込まれる可能性もあるため、上記の状況の人は最初から弁護士に相談する方が望ましいでしょう。
(当事務所の場合は弁護士の事務所をご紹介しています。)
不在者財産管理人選任の申立て
近年、日本はどんどん高齢化が進み、親が亡くなった時点で子供達が皆高齢という家庭も決して珍しくなくなりました。
遺産分割協議をしようと思ってもすでに意思表示ができない人がいる場合はどうすればよいのでしょうか。
親が判断できなければ子供が当然に代理できる、と思っている人もいるのですがそうではありません。
もし遺産分割協議を認知症の本人に代わって行う場合は「後見人」を選任し、その後見人と他の相続人の間で協議がなされることになります。
後見制度のそもそもの趣旨は、「被後見人(認知症などの本人)の財産を保護する」ことですから、協議の内容に家庭裁判所が介入します。
もし被後見人の法定相続分(民法で定められた相続分)が確保されていない状態の協議は原則、認められないと考えておかなくてはなりません。
※後見人もまた相続人の1人だった場合には別途「特別代理人」の選任が必要になります。
また、当事者にとっては「遺産分割協議」のために後見人を選任したとしても、協議が終わったから後見人をやめてよいというわけではありません。
被後見人(本人)の財産保護の必要性があることを裁判所に一度表明した以上、後見人の任務は被後見人(本人)が死亡するまで続きますので、気軽な気持ちで選任することはできないということです。
遺産分割協議で自分は相続財産をもらわない、と表明した場合、借金はどうなるのでしょうか?
これについてはとても大切ですので正確に理解する必要があります。
遺産分割協議で「相続財産は要りません」と表明することは、いわゆる「家庭裁判所に申立てる相続放棄」とは違うため、それを理由に負債を免れることはできない。
「遺産は要らないと言ったから、自分はもう親の借金とは一切関係ない」と思っている人は少なくないのですが、これはあくまでも「プラス財産」についての協議にすぎません。
負債については家庭裁判所の相続放棄手続きをしていない限りは、勝手に相続人の間で返済する人を決めることはできず、法定相続分(民法で定められた相続分)とおりに相続することになります。
ただし、債権者の同意があれば特定の相続人だけに債務を集中させることもできますので、ひとまず話し合いを試みてみるのもひとつの方法です。
遺産分割協議書というのは、「相続人全員が合意した内容を書面にして各相続人が実印(市区町村に登録した個人の印鑑)を押印したもの」です。
これは何のために作成するのかと言えば、不動産の名義変更(=相続登記)や銀行の預貯金の解約等、ありとあらゆる相続関係の手続きで添付するためです。
手続き先の機関(法務局や金融機関)では、誰が相続することになったのかということを実印を押された遺産分割協議書によって確認します。
遺産分割協議書は合意内容を適当に記載しただけでは手続きに使えないことも多く、「絶対にこれでなくてはならない」というわけではありませんが、ある程度記載すべき内容、要件が決まっています。
あくまで一例になりますが、遺産分割協議書の書式をご紹介します。
この書式はあくまで「相続人が全員存命である(=相続が一回だけ発生している)」パターンです。
相続人の一人が被相続人より後に亡くなっている(数次相続)、または先に亡くなっている(代襲相続)といったケースも珍しくありませんが、これについては若干記載方法が異なりますのできちんと専門家に作成してもらうことをおすすめします。
例えば、金融機関の口座解約などの手続きでは、多くの場合に銀行独自のフォーマットがあります。
その銀行の預金を相続する人が銀行の窓口に遺産分割協議書を持って行き「自分がもらうことになったから解約してほしい」と言っても、銀行のフォーマットにそれ以外の相続人が実印を押さなければ手続きできないこともあります。
そしてややこしいのが「すべての銀行が同じ流れではない」というところです。
そのため事前に電話で流れを確認してから相続人の1人が窓口に出向き、細かい書類等の説明を受ける方がよいでしょう。
相続人の1人が比較的時間に余裕があり、平日でも行けるような場合なら問題なくできることも多いのですが、手続きに慣れていない人や多くの書類を集めることが難しい高齢者については弁護士や司法書士に依頼する方がスムーズに進みます。
住宅を購入した際に「家が自分の物である」ことを証明するために重要な所有権移転登記。
そして、銀行ローンを組んだ時に必ず必要になる抵当権の設定や、ローン完済の時に忘れずにしておきたい抵当権抹消の登記。
これらのものは、手続の際に専門的な登記の知識が必要になるため、司法書士が手続を代理して行うことが一般的です。
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