不動産登記簿の見方

不動産登記簿の見方

  特に中古物件を購入する際は物件そのものの内覧も大切ですが、ぜひ一度購入希望物件の登記簿に目を通しておきたいものです。

 その不動産がどのような経緯で取引されてきたかを知ることで、思いがけない情報が得られるかも知れません。

不動産登記簿とは何?

登記簿はどんな役割を持つの?

後から購入しても先にCさんが
登記すれば対抗力を獲得する!

不動産登記簿(現在は「全部事項証明書」などと呼びます)がある意義は、登記されることによって、所有者や抵当権者が自分の権利を第三者に「対抗」できるという点です。

 たとえば、所有者Aさんが、BさんとCさんに二重に不動産を売ったとします。
 そのことの是非はともかくとして、この場合、どちらが真の所有者になるのでしょうか?こんな時にこそ登記がものをいいます。

結論としてはBさんの方が先に代金を払ったとしても、Cさんが先に登記をしてしまえば第三者に所有権を主張できることになるのです。

もちろん、BさんはAさんに「代金を返還しろ!」と言うことはできますが、現実的に返してもらえるかどうかはまた別問題です。
 こういった二重売買や、所有者になりすましたニセ売主によって売買代金を騙し取られる事件もまれに起こっています。
 そういう意味で、司法書士が行う「登記名義人の本人確認」は当事者にとっては煩わしいと感じることもあるでしょうが、取引の中では非常に重要なプロセスとなります。

誰が、どこで取得できる?

「登記簿」というと紙で作られた本を想像するでしょう。
 昔はブック式登記簿が法務局に据え置かれていて、それを閲覧したり謄写する方式を取っていました。

 そして以前は、その不動産のある地域の法務局まで行かないと登記簿は取得できないものでした。
 しかし、現在は法務局がすべてオンライン化されており、全国の登記簿を他の法務局から請求することができます。

 そして、「登記情報提供システム」という、自宅コンピュータから登記簿を確認できるシステムも作られています。
(※ただし、公的証明書としては使えません。)

なお、登記簿はその不動産の所有者や利害関係人だけでなく、誰でも取得することができます。(個人情報の観点からはいささか問題あり?とも思えますが)

どうやって登記を書き換える?

法務局に紙の申請書、もしくはオンラインで登記申請書と所定の添付書類を出すことにより申請し、不備がなければ法務局職員により登記簿への記入作業が行われます。

実際の登記簿を見てみましょう

登記簿は三部構成になっている

 では、具体的に土地の登記簿の例を見てみましょう。

登記簿は大きく分けて「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」の3つのパーツに分かれています。

なお、文字や数字の下に下線が引かれているものは、その登記がすでに抹消されたり、内容が変更されているものであることを示しています。(下記登記簿例の表題部および乙区1番)

①タイトル部分

 登記簿のことを現在は「全部事項証明書」などと呼んでいます。
 土地、建物どちらかということは右上のこの表示を見るとわかります。(表題部からも判断できます)

②所在

 何市何町何丁目、くらいまでの情報がここに記載されます。

③地番

 それぞれの土地の登記簿が起こされた時点でこの「地番」という土地の名前がつけられます。
 土地の地番のつけ方は法律によって定められており、自由につけられるわけではありません。
ここに記載されている「地番」はあくまで土地につけられた名称ですので、「住居表示(住民票に記載される住所)」とは異なります。(一致している地域もあります)

④地目

 土地の用途によって「宅地」「田」「畑」「山林」「公衆用道路」「雑種地」等の名前がつけられています。
なお、登記簿上の地目と実際の利用状況は異なることも多くなります。(「田」だったが現在は耕作していないなど)

一度つけられた地目は簡単に変えることはできず、変更登記をしたい場合、変更後の地目が現在の使用状況と一致している必要があります。
特に、農地を宅地にしたい場合などは「転用許可」といって、農業委員会の許可や届出が必要になります。

⑤地積

土地の面積が表示される場所ですが、これも必ずしも現実の面積とは一致しません。

 昔は測量技術も現在ほどではなかったため、かなり測り方がいい加減なものもあり、きちんと測り直したら倍くらい面積が違っていたということもあります。

⑥コンピュータ移記の旨

 登記簿が昔のブック式から現在のコンピュータに移動(移記)されたという旨の記載になります。

⑦甲区

 主に所有権に関する事項が記入される場所です。

⑧順位番号

 登記には「順位番号」が振られています。

 登記した時期が早い方が番号は若くなりますが、いったんされた登記に何らかの変更を加える場合(たとえば所有者の住所を変更する登記)は、「1番付記1号」など、もとの登記に付随する番号が振られます。 

⑨登記の目的

 何の登記をしたかが記載されます。

 「所有権移転」「所有権一部移転」など明確に示し、甲区では順番に追って見ていくと現在、誰の所有権がどれだけあるかがわかることになります。

⑩受付年月日、受付番号

登記申請が出された年月日、および、毎年1月1日から通算して、その法務局で何番目の登記か(受付番号)が示されます。

いったん登記した権利に何らかの変更を加える際などは、この受付番号を使って変更対象を指定することもあります。(例・1番所有権登記名義人住所変更)

⑪原因

 登記原因はある程度の類型の中で決まっており、たとえば所有権移転の場合なら「売買」「相続」「贈与」「交換」など、さまざまなものがあります。

⑫所有者の住所・氏名

所有者の登記名義取得時点での住所、氏名が記載されます。

 その後、住所変更などがあっても、住民登録の届出に伴って自動的に変わるわけではなく、本人の住所変更登記申請が必要です。

 ですから現在の住所と登記簿上の住所が一致しない、というのもよくあることです。

⑬次の所有者の順位番号

甲区1番の人から所有権を譲り受けた人は2番で所有権の登記を受けることになります。

 なお、「所有権一部移転」などの場合もあるため、甲区2番が登記されているからといって1番で登記した人の所有権がすべて失われているとは限らないことに注意が必要です。

この登記簿例では、現在は鈴木一郎が単独でこの不動産を所有していることがわかります。

⑭乙区

主に、抵当権や根抵当権など、担保権の関係が記載される場所です。

 これらの権利の内容が変更になった場合や抹消された場合も乙区に記載されます。

⑮順位番号

乙区にも順位番号が振られます。この登記簿例の1番抵当権は、下線が引かれているため、すでに権利が抹消されています。

 注意すべきなのは抵当権などの場合、所有権と異なり、「2人(2つ)以上の権利が併存できる」ということです。(所有権の「共有」は持分割合が決まっているため、同じ権利を2人以上が重複して保有しているわけではない)

 つまり、2番の抵当権が登記されているからといって1番の権利が無くなっているとは限らず、文字に下線が引かれていなければ権利は残っています。
そして、いざその不動産が競売にかけられた際は、順位が早い方から優先的に配当を受けられるということになります。

 ですから、多くの場合で2番抵当権以降の人は不動産が売られたとしても配当を受けることができません。(それでも抵当権をつけるのは、弁済を受ける以外の意図があるからです)

⑯原因、債権額などの法定された登記事項

 乙区の権利を登記する際も、定められた登記事項があるのでそれらをすべて記載します。(抵当権であれば債権額、利息、損害金、債務者、抵当権者)

⑰権利を抹消した旨の登記

登記を抹消した際も、「主登記」として一つの独立した箱に記載されます。
 そして、この「抹消登記」が入ると、抹消の対象になった登記内容に下線が引かれます。

 この登記簿がここで終わっているとすると、現在、この不動産には抵当権が一つもついていないということがわかります。

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 これらのものは、手続の際に専門的な登記の知識が必要になるため、法書士が手続を代理して行うことが一般的です。

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